Falling Walls Lab Sendai 2021
国際科学コミュニケーションイベント「Falling Walls Lab Sendai 2021」が2021年8月31日(火)にオンラインで開催されました。Falling Walls Labとは、ベルリンの壁崩壊20周年を記念し、2009年にベルリンに設立された財団「Falling Walls Foundation」が主催する、学生及び若手研究者向けの弁論大会です。東北大学主催、ドイツ科学・イノベーションフォーラム東京(DWIH東京)、東北知の創出センター、そして東北大学研究推進・支援機構URAセンター(URAセンター)の共催で行われました。
合計26名の参加者は、パワーポイントを使用し自らの画期的な研究プロジェクトを2分30秒で発表しました。発表後には1分間の質問タイムが設けられ、審査員からの質問に答えました。イベントの使用言語が英語であったのにも関わらず、英語を母国語としない参加者も自分の言葉で堂々と発表し、短い発表時間の中で、それぞれの研究における革新的なアイデアや、それがどのように社会の発展に貢献し得るかを最大限に表現していました。また、参加者は様々な国籍の方で構成されており、研究分野も多岐に渡りました。自然科学分野のテーマが目立った一方で、“Academic Gender Imbalance”(学術界における男女格差)や、“Cultural Biases”(文化的バイアス)といった社会科学分野をテーマに扱った発表もありました。さらに、感染症や持続可能エネルギーといった、近年特に注目されている問題と関連する研究の発表もありました。
このように多様性とアイデアに富んだ発表内容は、学術界と産業界両方から国籍や専門分野の異なる7名の審査員により、多角的な視点からの審査が行われました。評価基準は以下の3点で、「アイデアの革新性」、「社会における重要性とインパクト」そして「発表の構成とパフォーマンス」です。すべての発表が終了し、審査員が話し合いを行っている約40分の間、Chia-Huei Tseng氏により“Science Communication in the COVID-19 Era”というタイトルでプレゼンテーションが行われました。そこでは参加者向けのミニエクササイズが用意されており、リラックスした雰囲気の中、参加者たちは1分間の即席プレゼンテーションを通して自らのアイデアを発信するスキルをさらに高めました。
イベント終盤には入賞者発表が行われ、第1位に内野紗江佳氏(Breaking the Wall of Milk Science and Immunology)、第2位にManjit Singh Grewal氏 (Breaking the Wall of Clean Energy from Marine Biomass)、そして第3位にAditya Saha氏(Breaking the Wall of Unaffordable Solar Energy)が選出されました。内野氏の研究における、古典的な抗体産生細胞株の作製技術を“乳腺由来の細胞“に用いることで、母乳に含まれる免疫物質であるIgA抗体を作製可能にした点で革新性が認められ、見事優勝者に輝きました。さらに本イベントでは視聴者投票も実施され、Li Xue氏(Breaking the Wall of Computer-assisted Prediction)とJoy Sambo氏(Breaking the Wall of Menstrual Hygiene Management Practices)が同列1位でオーディエンス・アワードを手にしました。優勝した内野氏には、11月8日にドイツ・ベルリンで開催されるFalling Walls Lab Finale 2021 への出場権が与えられ、そのための往復航空券も贈呈されます。
Falling Walls Lab予選は、世界中で開催されており(今年は世界40都市以上)、各国予選での優勝者はベルリンで行われる本選への切符を手にします。本選は、ベルリンの壁崩壊の日にちなんで毎年11月8日に行われています。日本でも毎年イベント参加者を募集しています。